日向を掬う - 朝倉宏景 - 小説・無料試し読みなら、電子書籍・コミックストア ブックライブ

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「私、あなたの娘です」四十歳独身の大守良行の家に、突然中学生の少女・都築日向実が訪ねてきた。良行は十五年前、かつての恋人・都築街子に頼まれ、精子提供をした事を思い出す。交通事故でこの世を去った街子の遺言によって、良行は日向実と暮らすことになるが……。親子とは何か、家族とは何かを問いかける長編家族小説。

 かつての恋人に懇願されて精子提供したものの、妊娠・出産の連絡を受けただけでその後、接点のなかった「娘」をある日突然引き取ることになった40男の物語。  エンタメ系の作品。      * * * * *  設定は突拍子もないものだし、展開も想定を超えている。リアリティという点ではかなり低めのストーリーだと思います。  だけど勢いがある。緩急で言えば急が多くを占める。このジェットコースターのような勢いにつられてつい読まされてしまいます。  そして時おりの緩。これがいい箸休めになっています。朝倉さんの構成の妙でしょう。  ただ光枝が死病に罹っていることを仄めかすラストシーンは余計。エンタメなら、とことん楽しませて締めくくって欲しかった。  中途半端なお湿りはいらない。これがマイナス点です。  最後に主人公の良行。  ここまで脇の甘い男はダメだし、母親をババアと呼ぶところもNG。  母に対する思いやりの欠片もない。だから母の不調にも気づかない。自分のことしか頭にないからです。  「優しい」というキャラ設定は眉唾に思えます。むしろ底の浅い粗忽者にしか見えません。  なぜ周囲の支えが得られるのか疑問が残りました。